溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
そう言えば、夜中に彼のベッドにこっそり潜り込んで朝を迎えた時、彼に抱きしめられてドキドキしちゃったな。


『これでわかりましたか?お嬢様はどんなに危ないことをしようとしてたのか?』


『次に俺のベッドに入ってきたら問答無用で襲います。もう二度としないでください』


私が間違ったことをしたら、彼はちゃんと叱ってくれたっけ。


今となっては2人きりの生活は、とても楽しい思い出ばかり。


豊かな生活なんかじゃなくても、キミがいれば私は幸せだった。


彼のベッドに触れながら愛しい名を呟いた。


「……紫音」


ハッ、だめだめ、思い出に浸り切っている場合じゃない。


こんなことしてたら、いつまでたっても終わらないよ。


他にもやることがいっぱいあるんだから。


「さあっ、次はお風呂掃除をしようかな」


1人ごとなのに元気よく大きな声でそう言うと、作業にとりかかった。
< 280 / 341 >

この作品をシェア

pagetop