溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
もし見つかれば大学の推薦だって取り消されちゃうかもしれない。


こんなにまでして、彼は……。


守ろうとしてくれていたの?


私のことを。 


こんなにまでしてくれた彼を、私はあんな形で出て行かせてしまったんだ。


私はなんて、情けない主人なの。


「ごめんね、紫音」


泣かないって強く決めていても、どうしても我慢できなくて涙が込み上げる。


でも、新たな決心も湧いてきた。


紫音がこんなに尽くしてくれるに相応しい人になりたいって思う。


ここで、1人で暮らしているのには、ちゃんと意味がある。


紫音がいつ戻ってきてもいいように、私はここで待っていたかったんだ。


いつだったか、彼が私に言ってくれた言葉。


『俺が帰る場所はお嬢様のところだけですから』


あの時の私は、何もわかってなくて、ただただ嬉しかった。


でも今は違う。

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