溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
気持ちが沈みそうになって、自分の足元をじっと見つめていると後ろから気配がして振り返った。


「お嬢様……」


「あ、沢田さん」


複雑な表情の彼は私に軽く一礼する。


「お嬢様、どうかわがままを言うのはやめてください。
坊ちゃんが可哀想です」


突然、婚約破棄を申し出た私の行動は、やっぱりそう思われてしまうのか。


「ごめんなさい」


素直に謝ると、沢田さんは固く手を握り締めた。


「紫音くんが出て行ったことは、僕の責任でもあるし申し訳なく思っています。
だけど、こんなことをしたって彼が戻ってくるとは限りませんよ」


「う、はい」


確かにその通りだけど、彼を忘れることなんて出来ないよ。


「お嬢様、僕も紫音くんと同じ気持ちです。
心からお嬢様の幸せを願っています」


「あ、ありがとうございます。
でも、私。
ごめんなさい、やっぱり」

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