溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
休む暇も無くボールが飛んできたから、横に逃げようとしたら足がもつれて。


「……んんっ」


転びそうになったけど、なんとか踏ん張った。


地面に膝をついたらアウトだから、転んじゃ駄目だ。


すると、至近距離からまたボールが飛んできて、側頭部に激しい痛みが走る。


一瞬、目の前が真っ白になってチカチカ星が浮かぶ。


「うっ……」


(ピピピー)


笛の音が響いて、先生達が駆け寄ってきた。


「あなた、大丈夫?脳震盪をおこしてるんじゃないかしら」


私は手で頭を抑えて立っているのがやっとだったから、少しでもここで休憩が入るのがありがたい。


「わかばーっ」


晶ちゃんの泣きそうな声のする方を見てコクって頷いた。


心配そうに見守る晶ちゃんと薫さんの姿がぼやけて見えた。


こんなの平気。
まだ頑張れるよ、私。


って伝えたくて笑おうとしたけど、顔がひきつってうまく笑えない。

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