溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
私の代わりに彼の横腹あたりにボールが直撃して跳ね返る。


「キャッ」


驚いて思わず叫び声をあげた。


何がどうなっているのか全然頭が追いつかない。


振り向きざまに、彼は私を抱きしめてきたから身体が硬直した。


「……や」


こ、怖い、知らない男の人とこんなにくっつくなんて……。


この人、見覚えがあると思ったら確かこの間の用務員さんだ。


でも、こんなところで何をしているんだろう。


パニック寸前だったけど、彼の背中にボールが勢いよくあてられた時にようやく気がついた。


体を張って私のことを庇ってくれているんだ。


「どうして?」


こんなことをするなんてまるで……。


「おいっ、誰だよあいつ」


「部外者はでてけっ」


相手側の執事達が途端にいきりたつ。


もう少しのところで、私を仕留め損なったから苛立っている。

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