溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
「僕は忙しいから旅行なんて行く時間が無いんだ。
君は執事と一緒にご両親に会ってきなよ」


「天堂さん……」


「……」


彼がどんな気持ちでそう言ってくれているのかを思ったら申し訳なくて心が震える。


もっと、怒りをぶつけてくれたらどんなにいいか。
もはや、どう謝っていいのかすらわからない。


私が罪悪感で固まっていると紫音が代わりに天堂さんに話しかける。


「天堂さん、これまでのご無礼をお許しください。
俺がそばにいたことはお嬢様は知らなかったんです。
俺の意志でやっていたことです。
お嬢様はあなたを裏切っていたわけじゃない。
全部俺が悪い。
だから、気の済むようにしてください」


「気の済むように?じゃあ殴ってもいいってこと?」


「はい」


頭を下げる紫音を見て天堂さんは口角を上げる。


「君が僕に頭を下げるとはね。気分がいいものだな」

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