溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
「ああ、気にすることはないさ。
若葉の結婚相手は自分で決めさせてあげたいと思っていたからね」


「ほんと?」


「ああ、もちろん。それに天堂君に一時的に助けてもらったところで根本的な解決にはならないよ。下手をすればもっと厳しいことになるかもしれない」


「じゃ、じゃあ私は」


好きな人と結婚出来る自由があるなら、私は……。


コクリと息をのんで隣の紫音を見上げると、彼はサッと顔を赤らめてしっかりと頷いてくれた。


その瞬間を画面の向こうの両親も固唾を呑んで見守る。


「俺は……ただの執事です。
ですが、若葉お嬢様のことを誰よりも愛しています。
旦那様と奥様が許してくださるなら、俺は彼女と一緒になりたいです」


紫音が話すのを泣きそうになりながら、聞いていた。


紫音の言葉を聞いた父は神妙な顔で尋ねてきた。


「紫音、君を若葉の専属執事と決めた時に私が言ったことを覚えてるかい?」

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