溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
「ううっ……紫音」


彼にも最後にありがとうってきちんとお礼を言ってお別れをしたかったのに。


瞳からポロポロと涙が溢れて、冷たい床にむなしく落ちた。


「紫音、紫音」


もう何も考えられなくて頭が真っ白になりかけたそのとき。


騒々しく駆けてくる足音が響き渡る。


あ、あれって。


私がたまに大きな声で呼ぶといつも走ってくるから、叱られていたっけ。


でも、その癖は一向になおらなくて。


何を置いても1番に駆けつけてくれる。


「紫音です、お嬢様失礼します」


一応ドアをノックしてから急いで入ってきた彼。


筋肉質だけど細身でスラッとしているから、執事服の黒タキシードがよく似合う。


久住 紫音(くずみ しおん)は私の専属執事で高校3年生18歳。


キリッとした眉毛、意志の強そうな鳶色の鋭い瞳に高い鼻ーーその端正な顔立ちと身長180cm以上のモデル顔負けのスタイルの良さ。
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