溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
「どうしました、お嬢様」
尋ねる声は優しくて心が落ちつく。
「どこにいたの?」
「すみません、洗い物をしていました」
「ごめんね、紫音1人で仕事しないといけないから大変だよね」
「いえ、俺は大丈夫です。それよりどうかしましたか?」
「あのね、紫音がまだ……」
紫音が邸の中にまだいるかどうか気になって呼んでみたって言えなくて俯いた。
よかった、まだいてくれて。
安堵したけれど、遅かれ早かれ彼もきっとこの家を去ってしまうだろう。
だって他の人達はみんな一緒に出て行ってしまった。
当然だよ、だってお給料が支払えないんだもん。
仕方がないよね。
私には彼を引き止める資格なんてあるわけない。
寂しいけど、受け入れるしかないんだ。
「若葉お嬢様、顔色がよくないですね。
そうだ、甘いものをお持ちしましょう」