溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
どうしょう、胸の奥がジワっと暖かくなって同時に涙が出そう。


でも、泣いて彼を困らせたくなくて我慢した。


「……っ」


「いや、だから」


彼が慌てて白いハンカチを差し出してくれた。

 
「……」


「わかりました、お嬢様」


そう言って私の背中を優しくさすりながら、表情を緩めるからホッとした。


「問い詰めてしまってすみません。
金庫の中の現金は如月家のものですから、使い道はお嬢様の自由です。
そういうことなら……もうこの話は」


「うん、でも実は現金だけじゃなくて……」


こうなったら、何もかも白状してしまおうと思った。


「……まさか」


勘のいい彼は私が全て言わなくてもわかったみたいで、クローゼットの方に駆け寄った。


そして、引き出しを開けて額を押さえてガックリと肩を落としてしまった。


「マジか」
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