溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
なんとかしなきゃ、彼が泣いてしまいそうな気がして心配になった。


急いで立ち上がり彼に近づき。


そのまま、そっと背中に寄りかかる。


広い背中、いつもは逞しくて頼り甲斐があるけど今は。


小さく……震えてる。


「ごめんね、でもほんとに私は平気なの」


こんなことしか言えなくて情けないけど。


でもね、物が無くなることなんてそんなに悲しいことじゃない。


本当に切ないのは、みんながいなくなってしまったこと。


だけど、彼は1人でも私のそばにこうしていてくれてる。


だから、私は少しも辛くなんてないよ。


「紫音がいてくれてよかった」


「……」


すると彼の背中がピクリと反応したから反射的に離れた。


やだ、私ったら何言ってるの、だから重いんだってば。
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