溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
こんなことばかり言ってたら彼にプレッシャーをかけてしまいそう。


紫音をこの家に無理やり縛りつけたりしちゃいけないのに。


「あ、あのね、紫音、全部なくなったわけじゃないよ宝石がまだひとつだけあるの」


そうそう、とっておきのはちゃんと残している。


それは、ドレッサーの1番下の引き出しに鍵をかけて大切にしまっていた。


鍵を開けて中から紫色の小箱を取り出して彼の方に持っていった。


「あの、これ」


ひいお婆さまから受け継がれてきたダイヤの指輪。


特大サイズのダイヤモンド。


昨日、使用人のみんなに何か思い出になるものをと思って私のドレスや宝飾品を配った。


その中でも特にいいものを最後に紫音に渡したかったから、これだけはとっておいたんだ。


彼は邸を出ていかないと言ってくれたからこれはまだわたしの手元にある。
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