溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
無表情の紫音は、誰が見ても完全にキレているのがわかる。


私を捕まえていた御曹司の胸ぐらを掴んで、殴りつけようと片方の拳を振り上げる。


「紫音、もうやめて」


「……ダメです。お嬢様が許しても俺は許さない」


怒気を含んだ声で吐き捨てるように言う。


私だってすぐには許せないけど、これ以上やったら、きっと紫音によくないことが起きそうな気がして怖い。


すると、そこに駐輪場の方から執事達が3人駆けつけてきた。


その中にさっき追い払われた彼もいる。


「紫音くん、坊ちゃんを許してくれ、頼む」


「お願いします、二度とこんなことはさせませんから」


「この通り、謝ります」


中にはその場で土下座をする執事までいて、紫音はチッと舌打ちをした。


「こんな奴らをなんで庇うんだよ」


「僕たちは執事だから……君にもわかるだろ?」


執事達に懇願された紫音は、小さく息を吐いた。


「……わかりたくない」

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