溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
怒りが収まらない彼の拳はまだ振り下ろされていなかったから、急いで後ろから抱きついた。


「紫音、紫音、もういいから。私は大丈夫だから」


すると、ようやく拳を下ろしてくれたからホッと安堵した。


「今度、俺のお嬢様の視界に入ったら許さない……覚えておけ」


紫音は御曹司達を怒鳴りつけると、私の手を引いて駐輪場へ向かって歩きだした。


無言で歩く彼の背中を見ている時、こう思っていた。


さっき、彼らから我が家のことをひどく馬鹿にされた事は絶対に伝えないでおこうって。


きっと、紫音がそれを聞いたら私以上に傷つくし怒り狂うに違いない。


だから、辛くても胸の中にしまっておくんだ。


この学園にはあからさまに、スクールカーストが存在していて、その地位は財力によって決まる。


我が家によくない噂が流れていて、私は心無い人達から見下され蔑まれているみたい。


これが、今の私の置かれている現実。
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