溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
冷たい風が吹いて、私の髪をふわりとなびかせる。
「寒いね、そろそろおうちに帰ろっか」
「もう少しだけ」
彼の掠れた声が耳元で響くと胸の奥が締め付けられたから、もう一度背中を優しくさすった。
「う、うん」
ドキドキ、ドキドキ、この振動はどちらのものかわからないくらいに密着している。
彼の広い腕の中にいると、何もかも忘れてしまうくらいフワフワして気持ちが安らぐ。
紫音も、同じ気持ちでいてくれたらいいな。
それからしばらく、互いのぬくもりで慰め合うように抱き合っていた。