溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
簡単に腕の中に落ちてくる彼女。


「お嬢様」


「……んっ」


その小さな身体を強く抱きしめて、彼女の桜色の頬に触れた。


柔らかい唇を指でなぞっても、一切抵抗する気配がない。


「……」


こっちが心配になるくらい本当に無防備だから困る。


見つめ合ったまま目が離せない。


「……おじょう……さま」


「……あっ、紫音」


ちょっとだけ怖がらせてすぐにやめるつもりだったのに、彼女の甘い感触や芳しい香りに眩暈を覚えた。


このまま、押し倒してすべて俺のものに出来たら……。


ついそんな欲望が頭をかすめる。


同時にとっくに消したはずの気持ちがまだ残っていることに驚く。


「紫音ごめんなさい、怒っちゃやだよ」


俺が怒ってると思ってるのか?


その時、彼女のほうから縋り付くように抱き着いてきて背中に腕が回される。


すると理性の糸がプツッと途切れた。


バサッ。
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