溺愛執事は貧乏お嬢様を守り抜く
次の瞬間、とうとう彼女をベッドに押し倒してしまっていた。


「わ、かば……」


彼女の不安そうな瞳、赤い頬、小さく吐く息。


そのどれもが、俺をおかしくさせていく。


「しおん……くん」


「……っッ」


そっと閉じられる彼女のまぶた。


「ふ」


そこに優しくキスを落とすと小さく声を漏らす彼女。


「ん、ふぁ……」


なぜ、彼女は一切抵抗しないんだろう。


「……」


形のいいおでこと、ほてった頬にも唇をおしあてた。


「……んっ」


可愛い声が漏れ聞こえる。


流れのままに今度は唇にキスをし……そうになった。


その時、スマホのアラーム音が鳴り響いたため、一瞬で引き戻される現実。


ヤバい今のは、かなり危なかった。


もし唇にキスをしたら、その先をきっと我慢出来なかっただろう。


こんな時でも執事としてのギリギリの理性にブレーキがかかった。


ダメなんだ、俺は彼女の執事だから……。


どんなに彼女のことを好きでも、気持ちのままに動いてはいけない。


頭を切り替えて、低い声で言い放った。


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