冴えないモブ先生の正体はS級王子様!?

本当は一度だけ、モブセンの前髪の下を見たことがある。

夏休みだった。

私は一学期の期末の結果が悪くて、
夏休みに補習になった。

通常と同じ時間に登校して、お昼に帰るんだけど、
補習一日目にして気分はだるだる。

暑いのは分かりきってたけど、補習前にいつもみたいに屋上に寄ったら、そこにはモブセンが居た。

その日は風が強くて、
ふわっと浮いた前髪の下の目を見たんだ。

ハッとするくらい、きれいな目、だったと思う。
暑かったし、かげろうのせいで錯覚かもしれない。

でもなんとなく、モブセンの「秘密」を気にしてしまうのが嫌だから、あんまり関わらないようにしてた。

屋上の扉の上に設置されているスピーカーから音割れしたチャイムが鳴った。
だいぶ古いスピーカーだ。
見て分かるくらいボロボロだもん。

「え、リリ。これ、始まるチャイムだよ」

「えーん。遅刻じゃん」

「もー!」

凛子だってのんきにココア飲んでたくせに、私の腕を掴んで走り出した。
寝起きの体にダッシュはキツイ。

それにもう遅刻はしてるんだし、走っても意味はないのに、
足の速い凛子に引っ張られて走るのはちょっと楽しかった。
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