御曹司は初心な彼女を腕の中に抱きとめたい
毎日のようにメッセージのやり取りが始まった。
彼はまた実験が始まり、つきっきりになっていると教えてくれた。一度始まるとしばらくは家に帰るのさえままならない時もあるようだ。
時折変な時間にメッセージが来るのも、合間を縫って送ってくれているからなのだろう。
忙しそうな様子なのにまめに送ってきてくれるメッセージがやっぱり嬉しい。おはようって短い挨拶だけの時もある。けれどそのメッセージを送ってくれる時間を私に作ってくれただけで、彼の気持ちが嬉しかった。
【ようやく少し落ち着きそうなんだ。今週末会えないか?】
あれから3週間、久しぶりのお誘いだった。もちろん答えは“大丈夫“とメッセージを送った。
今回は少し遠出してドライブに行こうと誘われた。
約束してから毎日出かけるを心待ちにしている自分がいた。
また今回も何を着ていこうか考えあぐねていると、美和が私のソワソワした様子に気がつき相談に乗ってくれた。ブラウンのノースリーブワンピースにケリーグリーンの薄手のカーデガンをかけるように言われた。足元はブラウンのサンダルで白のバックを薦められた。
駅で待ち合わせをしようとしたが、7月に入り暑い日が続いているので迎えにきて来れるという。
前回私のマンションのそばまで送り届けてくれたので、そこで待ち合わせをした。
そういえば彼がどこに住んでいるのか知らなかったとふと思った。
9時の約束より少し早くに待ち合わせの場所へ行くと大きな車が止まっていた。私でも知っているエンブレムのついた外車で、真っ白のRV車だった。まさか、と思ったが私が近くまで行くと彼が車から降りてきた。
「おはよう」
「お、おはようございます」
私が彼の大きな車をみて驚いていると、クスッと笑っていた。
「どうした?」
「すごい車に乗っているんですね」
磨き上げられた真っ白な車に圧倒されていると助手席のドアが開けられた。
「さ、乗って」
少し車高が高く、手すりにつかまりながら乗り込むと彼がドアを閉めてくれた。彼は運転席に回り込むとシートベルトをかけた。
私も真似をしてシートベルトをかけようとするが緊張してうまくはまらない。彼は私の方に身を乗り出すと代わりにシートベルトを締めてくれた。
「ありがとうございます」
「久しぶりだからってそんなに緊張しないで。あんなにメッセージのやり取りは砕けてきたのに、また振り出しに戻った? 俺の研究のせいだな。じゃ、今日はまたみちるちゃんにアプローチしないといけないな」
揶揄うような言葉にすでに私はドキドキさせられっぱなしだ。
「千葉の方にいこうと思うんだけどいい?」
「はい」
車はハザードを消すとスムーズに道路を走り出した。
前髪が邪魔なのか運転する前にかき上げていた。その横顔は今まで見た顔とまるで違った。元々彫りの深めが綺麗な顔立ちだと思っていたが、今日は肌の綺麗さや目元にあるほくろも見える。顔を隠しているけど、奥山さんって本当はものすごくイケメンなんじゃ、と見入ってしまう。
「あんまり見ないで」
私が彼の横顔を見つめているのに気がついた彼は恥ずかしそうに笑っていた。
「ごめんなさい。いつも前髪で隠れていたから新鮮で」
「ははは、そうだよな。わざと隠しているんだ。めんどくさいし、みんな見た目に惹かれる奴ばかりでうんざりだったから」
確かにこれだけのイケメンなら女性にモテるだろう。本人が自覚するくらいなんだから相当だったのだろう。
「見られるのが苦手なんですよね。ごめんなさい」
私は前を向く。すると彼も前を向きながら笑っていた。
「見られるのが嫌なんじゃなくて、見た目しか見てもらえないことにうんざりしたんだ。表情を隠しただけで誰も俺に見向きもしなかったよ。そんなもんなんだな」
少し自虐的な気もするが、彼はきっと見た目の良さで苦労や嫌な思いをしてきたのだろう。彼は顔を見られるのが嫌なんだと思い、ますます顔を窓の外に向けた。
「みちるちゃん、内面を見ないで顔だけ見る人が嫌いなだけだよ。みちるちゃんは俺の見た目を気にせず一緒に食事に行ったり、こうして今日も出掛けてくれるだろ。だから反対に顔を背けられると傷つくんだけど」
確かに会話中に顔を背けられるなんて、彼のためだと思ったにしてもちょっと失礼だったかもしれない。
「ごめんなさい」
「謝って欲しいわけじゃない。みちるちゃんには俺の全部を見てもらいたいって思っただけだから」
また彼の言葉に私の鼓動は速くなっていった。
彼はまた実験が始まり、つきっきりになっていると教えてくれた。一度始まるとしばらくは家に帰るのさえままならない時もあるようだ。
時折変な時間にメッセージが来るのも、合間を縫って送ってくれているからなのだろう。
忙しそうな様子なのにまめに送ってきてくれるメッセージがやっぱり嬉しい。おはようって短い挨拶だけの時もある。けれどそのメッセージを送ってくれる時間を私に作ってくれただけで、彼の気持ちが嬉しかった。
【ようやく少し落ち着きそうなんだ。今週末会えないか?】
あれから3週間、久しぶりのお誘いだった。もちろん答えは“大丈夫“とメッセージを送った。
今回は少し遠出してドライブに行こうと誘われた。
約束してから毎日出かけるを心待ちにしている自分がいた。
また今回も何を着ていこうか考えあぐねていると、美和が私のソワソワした様子に気がつき相談に乗ってくれた。ブラウンのノースリーブワンピースにケリーグリーンの薄手のカーデガンをかけるように言われた。足元はブラウンのサンダルで白のバックを薦められた。
駅で待ち合わせをしようとしたが、7月に入り暑い日が続いているので迎えにきて来れるという。
前回私のマンションのそばまで送り届けてくれたので、そこで待ち合わせをした。
そういえば彼がどこに住んでいるのか知らなかったとふと思った。
9時の約束より少し早くに待ち合わせの場所へ行くと大きな車が止まっていた。私でも知っているエンブレムのついた外車で、真っ白のRV車だった。まさか、と思ったが私が近くまで行くと彼が車から降りてきた。
「おはよう」
「お、おはようございます」
私が彼の大きな車をみて驚いていると、クスッと笑っていた。
「どうした?」
「すごい車に乗っているんですね」
磨き上げられた真っ白な車に圧倒されていると助手席のドアが開けられた。
「さ、乗って」
少し車高が高く、手すりにつかまりながら乗り込むと彼がドアを閉めてくれた。彼は運転席に回り込むとシートベルトをかけた。
私も真似をしてシートベルトをかけようとするが緊張してうまくはまらない。彼は私の方に身を乗り出すと代わりにシートベルトを締めてくれた。
「ありがとうございます」
「久しぶりだからってそんなに緊張しないで。あんなにメッセージのやり取りは砕けてきたのに、また振り出しに戻った? 俺の研究のせいだな。じゃ、今日はまたみちるちゃんにアプローチしないといけないな」
揶揄うような言葉にすでに私はドキドキさせられっぱなしだ。
「千葉の方にいこうと思うんだけどいい?」
「はい」
車はハザードを消すとスムーズに道路を走り出した。
前髪が邪魔なのか運転する前にかき上げていた。その横顔は今まで見た顔とまるで違った。元々彫りの深めが綺麗な顔立ちだと思っていたが、今日は肌の綺麗さや目元にあるほくろも見える。顔を隠しているけど、奥山さんって本当はものすごくイケメンなんじゃ、と見入ってしまう。
「あんまり見ないで」
私が彼の横顔を見つめているのに気がついた彼は恥ずかしそうに笑っていた。
「ごめんなさい。いつも前髪で隠れていたから新鮮で」
「ははは、そうだよな。わざと隠しているんだ。めんどくさいし、みんな見た目に惹かれる奴ばかりでうんざりだったから」
確かにこれだけのイケメンなら女性にモテるだろう。本人が自覚するくらいなんだから相当だったのだろう。
「見られるのが苦手なんですよね。ごめんなさい」
私は前を向く。すると彼も前を向きながら笑っていた。
「見られるのが嫌なんじゃなくて、見た目しか見てもらえないことにうんざりしたんだ。表情を隠しただけで誰も俺に見向きもしなかったよ。そんなもんなんだな」
少し自虐的な気もするが、彼はきっと見た目の良さで苦労や嫌な思いをしてきたのだろう。彼は顔を見られるのが嫌なんだと思い、ますます顔を窓の外に向けた。
「みちるちゃん、内面を見ないで顔だけ見る人が嫌いなだけだよ。みちるちゃんは俺の見た目を気にせず一緒に食事に行ったり、こうして今日も出掛けてくれるだろ。だから反対に顔を背けられると傷つくんだけど」
確かに会話中に顔を背けられるなんて、彼のためだと思ったにしてもちょっと失礼だったかもしれない。
「ごめんなさい」
「謝って欲しいわけじゃない。みちるちゃんには俺の全部を見てもらいたいって思っただけだから」
また彼の言葉に私の鼓動は速くなっていった。