御曹司は初心な彼女を腕の中に抱きとめたい
「みちる、好きだ。愛してる」

彼は何度も私の名前を呼んでくれた。その度に彼の気持ちが私に流れ込んでくる。彼に求められていると思うだけで、胸の奥に温かいものが入ってきた。
私の気持ちがうまく伝えられずにもどかしい。彼は私にストレートに伝えてくれるのに、私はうまく言えない。

「蒼生さん、私も好きなの」

しがみつくように抱きつきながら伝えるが、この想いが届いているのかわからずもどかしい。

「ありがとう、みちる」

私を抱きしめる手はさらに力を増す。彼の動きは更に激しくなり、私はもう何も考えられなくなった。

気がつくと私は彼に腕枕をされ、髪を撫でられていた。

「気が付いたか?」

「うん」

「身体は大丈夫か? ごめん、無理をさせたな」

私が気を失うように寝てしまったので心配させてしまったようだ。髪を撫でる彼の手は優しくて、またこのまま眠ってしまいそうだった。

「大丈夫です。蒼生さんでよかった」

私の初めてが蒼生さんで本当に幸せだった。こんな体を重ねるって不安ばかりだったが、こんなに幸せな気持ちになれるのだと分かったのは相手が彼だったからだと思う。

「お風呂に入るか?」

「入りたいかも」

分かった、というと彼は起き上がり、バスルームへ行ってしまった。
お湯を張る音が聞こえてくると彼は戻ってきて私を抱き上げるとバスルームへ連れて行かれる。
「自分でできます」と慌てて伝えるが、彼は首を横に振った。

「俺がしてあげたいんだ。わがままかもしれないが、やっとこうしてみちるに触れられたのが嬉しいんだ。もう少し余韻に浸りたい」

そう言われては何も言えない。
私はされるがままに髪も体も洗ってもらってしまった。
恥ずかしくて仕方ないが彼はやめてくれず、最後まで全部洗われてしまった。
私をバスタブに入れると自分はさっさと洗い、私の後ろに回り込み一緒に浸かった。
今日一日でいくつ初めての経験をしたのだろう。私は一気に大人の階段を登ってしまった。
< 29 / 60 >

この作品をシェア

pagetop