御曹司は初心な彼女を腕の中に抱きとめたい
食材や調味料を買うと、私たちはマンションに戻った。
私の荷物も運び込まれていた。
「みちるの部屋はここ。自由に使ってくれ。クローゼットも空だから。でも寝室は俺と一緒だからな」
それだけ言うと彼は頭にチュッとリップ音を響かせ、私の部屋から出て行った。こんな色気を醸し出され初心者の私にはハードルが高すぎる。
出会った頃の彼はぶっきらぼうだったのに、いまではとにかく甘い。付き合うとこれが普通なのかわからないが、とにかく彼は私に過保護だし、甘やかしたがる。何よりもドキッとさせるようなのことを何事もなかったかのように言い放つ。私はその度に動揺させられてしまう。彼の色気に当てられ、きっと耳まで真っ赤になっているだろう。
でも私も彼の可愛らしい部分や男らしい面、優しいところ、色々なところが見えてきて不安になるよりもますます好きになってしまっている自分が怖い。これ以上彼を好きになったらどうしたらいいのかと悶えてしまう。
「みちる、今日は一緒に暮らす初めての日だから外食にしないか? 部屋の片付けもあるから疲れるだろう?」
「あ、私が作りますよ」
慌てて立ち上がろうとすると彼に静止される。
「食事を作って欲しくて一緒に暮らしたいんじゃないって言っただろう?」
ちゃめっ気のある表情で私を諭す。その顔を見るとなにも言えなくなってしまう。
「ここにデリバリーを取るって言うのはどうだ? 近くのホテルやツインタワーのお店からも届くし、家でのんびり食べるのもいいかも知れないな」
「そうですね」
彼がタブレットを検索し始めると私は隣から覗き込んだ。どのお店の料理も美味しそうで食いしん坊の私はすぐに決められない。彼は笑いながら、いろいろ頼んだらいいんじゃないか? と提案してきてくれた。
私は悩みに悩んだ結果、今日は引っ越しだから蕎麦にします、と伝えた。ふたりで天ざるそばを頼むことにした。
料理を待つ間、遅れて届いた家電や食器などの雑貨を整理した。まさか今日家電が配送されると思ってもみず、とても驚いた。
さっきまでシックな黒でまとめられてモデルルームのようだったはずなのに、今は私の部屋にあった観葉植物も運び込まれ、さらには調理器具に食器が棚に収まると生活感のない部屋があっという間に家庭的な雰囲気に変わった。色が追加され、雰囲気が変わってしまった。
「あの、だいぶ雰囲気が変わってしまったけど大丈夫?」
ソファには北欧風のクッションが置かれており、さらに部屋の雰囲気を壊してしまっていると思う。とても可愛らしいクッションだったので見ていたら一緒に買ってくれた。でも部屋に帰ると彼の部屋の雰囲気のものではなかったと反省した。
「全然大丈夫だけど。むしろ過ごしやすそうな雰囲気になったよ。暗かった部屋が明るくなった」
それならよかった。今更だけど、少しホッとした。
頼んでいたデリバリーの蕎麦が届くと重箱に天ぷらが入っており、まだほのかに温かかった。
私たちはダイニングにいくがなんだか落ちつかない。
十人は座れそうなダイニングセットの端に2人で座っている姿はなんだか滑稽だ。
「本当にこのテーブル大きいんだよな」
「確かに大きいですね。普通の家じゃ入らなさそう。でも蒼生さんの部屋にはこのくらいないとバランスが取れないのかもしれないですね」
ソファもキングサイズのベッドも、このテーブルも何もかもが規格外の大きさ。でも蒼生さん自身はこだわりもないし、決まったところにしかいない。ソファだってあんなに大きいのに端のところにだけしか座っている形跡がない。
「でもみちるがいてくれるだけで家の中が明るくなったみたいだな。これからの毎日が楽しみで仕方ないな」
蒼生さんの言葉が胸に沁みる。私だってこれからの生活が楽しみで仕方ない。彼に幻滅されないようにしなきゃ、と思った。
私の荷物も運び込まれていた。
「みちるの部屋はここ。自由に使ってくれ。クローゼットも空だから。でも寝室は俺と一緒だからな」
それだけ言うと彼は頭にチュッとリップ音を響かせ、私の部屋から出て行った。こんな色気を醸し出され初心者の私にはハードルが高すぎる。
出会った頃の彼はぶっきらぼうだったのに、いまではとにかく甘い。付き合うとこれが普通なのかわからないが、とにかく彼は私に過保護だし、甘やかしたがる。何よりもドキッとさせるようなのことを何事もなかったかのように言い放つ。私はその度に動揺させられてしまう。彼の色気に当てられ、きっと耳まで真っ赤になっているだろう。
でも私も彼の可愛らしい部分や男らしい面、優しいところ、色々なところが見えてきて不安になるよりもますます好きになってしまっている自分が怖い。これ以上彼を好きになったらどうしたらいいのかと悶えてしまう。
「みちる、今日は一緒に暮らす初めての日だから外食にしないか? 部屋の片付けもあるから疲れるだろう?」
「あ、私が作りますよ」
慌てて立ち上がろうとすると彼に静止される。
「食事を作って欲しくて一緒に暮らしたいんじゃないって言っただろう?」
ちゃめっ気のある表情で私を諭す。その顔を見るとなにも言えなくなってしまう。
「ここにデリバリーを取るって言うのはどうだ? 近くのホテルやツインタワーのお店からも届くし、家でのんびり食べるのもいいかも知れないな」
「そうですね」
彼がタブレットを検索し始めると私は隣から覗き込んだ。どのお店の料理も美味しそうで食いしん坊の私はすぐに決められない。彼は笑いながら、いろいろ頼んだらいいんじゃないか? と提案してきてくれた。
私は悩みに悩んだ結果、今日は引っ越しだから蕎麦にします、と伝えた。ふたりで天ざるそばを頼むことにした。
料理を待つ間、遅れて届いた家電や食器などの雑貨を整理した。まさか今日家電が配送されると思ってもみず、とても驚いた。
さっきまでシックな黒でまとめられてモデルルームのようだったはずなのに、今は私の部屋にあった観葉植物も運び込まれ、さらには調理器具に食器が棚に収まると生活感のない部屋があっという間に家庭的な雰囲気に変わった。色が追加され、雰囲気が変わってしまった。
「あの、だいぶ雰囲気が変わってしまったけど大丈夫?」
ソファには北欧風のクッションが置かれており、さらに部屋の雰囲気を壊してしまっていると思う。とても可愛らしいクッションだったので見ていたら一緒に買ってくれた。でも部屋に帰ると彼の部屋の雰囲気のものではなかったと反省した。
「全然大丈夫だけど。むしろ過ごしやすそうな雰囲気になったよ。暗かった部屋が明るくなった」
それならよかった。今更だけど、少しホッとした。
頼んでいたデリバリーの蕎麦が届くと重箱に天ぷらが入っており、まだほのかに温かかった。
私たちはダイニングにいくがなんだか落ちつかない。
十人は座れそうなダイニングセットの端に2人で座っている姿はなんだか滑稽だ。
「本当にこのテーブル大きいんだよな」
「確かに大きいですね。普通の家じゃ入らなさそう。でも蒼生さんの部屋にはこのくらいないとバランスが取れないのかもしれないですね」
ソファもキングサイズのベッドも、このテーブルも何もかもが規格外の大きさ。でも蒼生さん自身はこだわりもないし、決まったところにしかいない。ソファだってあんなに大きいのに端のところにだけしか座っている形跡がない。
「でもみちるがいてくれるだけで家の中が明るくなったみたいだな。これからの毎日が楽しみで仕方ないな」
蒼生さんの言葉が胸に沁みる。私だってこれからの生活が楽しみで仕方ない。彼に幻滅されないようにしなきゃ、と思った。