隣は僕のもの
2.変わりそうで変わらない距離
「ここまで送ってくれてありがと」
『いえいえ。明日10時に迎えに行きます』
「うん、待ってるね」
『今日楽しみで寝れないかも』
「遠足前の子どもか」
『遠足より楽しみです』
「寝れなかったらひつじ100匹数えるんだよ?」
『先輩こそ』
「はいはい」
『じゃあまた明日』
「うん!またね」
駅の改札を抜けて後ろを振り返るとまだこっちを見てて、早く行きな〜と手を振ると、ちょっと恥ずかしそうに手を振り返してくれた。
弟がいたらこんな感じなのかな〜と思いながら、家に向かって歩いていると、いつの間にか鼻歌を歌ってて。
「浮かれてるな〜私」
[あれ、立花さん?]
「え!」
[今日も仕事おつかれさま]
「ひぇ〜とんでもないです。主任の1/10も働いてないです」
[そんなことないよ。立花さん頑張ってくれていつも助かってる]
「1週間の疲れ吹っ飛びました」
[ははっ]
「主任ってここらへんにお住まいなんですか?」
[うん、そこのマンション]
「私はその隣の建物です!」
[知らなかった]
「ふふ、気付かないもんですね」
[そうだね]
「帰り道で目の保養、おっと白石主任に会えてよかったです!」
[ふはっ、ありがと。気をつけて帰ってね]
「はい!」
仕事帰りでヘトヘトな私に対して、オフィスで見る姿そのままの輝きな主任に心の中で手を合わせた。生きる糧をありがとうございます。
その日の夜は何を食べるか考えてたらいつの間にか眠っていた。ひつじの出番なく朝を迎えた。