夏のおわりと、恋のはじまり
第3話「終わりと始まり」
わりと足の速さには自信はあるのだが、全力で逃げる男子になかなか追いつくことは出来ない。
悔しいっ、私を馬鹿にして!
と思っているのに、体は付いて来ない。息が苦しくなり、足に乳酸が溜まる。元々日中に学校のプールで長時間泳ぎまくったせいで、特に今日は体力が残っていない。
ああ、それに今日はこれから帰って、残りの宿題も終わらせなければならないのだ。なんたる憂鬱。なんたる夏の終わり方だろうか。
私が息を切らせて、膝に手を付きへばっていると、しばらくして、すぐ傍にユウキが駆け寄って来る気配を感じた。
「ごめんごめん、調子に乗りすぎた」
絶え絶えの息がなかなかおさまらず、ユウキをなんとか見上げて、睨みつけることぐらいしか出来なかった。
「でも、おまえのことが好きなのは本当だから」
「……えっ」
「恋が始まるかは、おまえ次第だよ」
なにそれ。そんな言葉じゃ許さないんだからっ。
「ふんっ、もう知らない!」
私はなんとかその言葉を吐き捨てると、支えようとするユウキの手を払いのけた。
「ごめんって、本当ごめんっ、悪かったって。ずっと言い出せなかったんだよ。茶化すように言って、本当にごめん」
私はユウキの言葉を無視し、Uターンすると、自宅への道を力強く歩いた。ユウキはオロオロと私の後を付いて来る。
「本当だって。おまえは俺のこと兄弟くらいに思ってるんだろうけど。いやオレも、ガキのころはそうだったけどさ」
「なにそれ、信じられないっ」
「気が付いたら、好きだったって言うか。これからもずっと一緒にいたいなって。それって好きってことだろ」
そんな甘いこと言ったって、絶対、許さないんだからっ。
かぁーっと、怒りと共に、血が頭にのぼってきた。本当に昔からユウキは人を小馬鹿にするところがある、許せない。何様だっ。生意気だ。でも、同じくらい優しくて、頼りになって、気のおけない、いいやつなのも知っている。
私は、慌てて付いて来るユウキに振り返った。
「でも残りの宿題、手伝ってくれるなら、許してあげる」
ユウキは目を丸くして、私の顔をマジマジと覗き込んだ後、ホッとしたようにハハッと微笑んだ。
「いくらでも、お手伝いします!」
その後、本当に私とユウキの恋が始まって、夏が終わった後の季節も、楽しくて、ワクワクして、ドキドキしたかは、また別のお話。
おわり
悔しいっ、私を馬鹿にして!
と思っているのに、体は付いて来ない。息が苦しくなり、足に乳酸が溜まる。元々日中に学校のプールで長時間泳ぎまくったせいで、特に今日は体力が残っていない。
ああ、それに今日はこれから帰って、残りの宿題も終わらせなければならないのだ。なんたる憂鬱。なんたる夏の終わり方だろうか。
私が息を切らせて、膝に手を付きへばっていると、しばらくして、すぐ傍にユウキが駆け寄って来る気配を感じた。
「ごめんごめん、調子に乗りすぎた」
絶え絶えの息がなかなかおさまらず、ユウキをなんとか見上げて、睨みつけることぐらいしか出来なかった。
「でも、おまえのことが好きなのは本当だから」
「……えっ」
「恋が始まるかは、おまえ次第だよ」
なにそれ。そんな言葉じゃ許さないんだからっ。
「ふんっ、もう知らない!」
私はなんとかその言葉を吐き捨てると、支えようとするユウキの手を払いのけた。
「ごめんって、本当ごめんっ、悪かったって。ずっと言い出せなかったんだよ。茶化すように言って、本当にごめん」
私はユウキの言葉を無視し、Uターンすると、自宅への道を力強く歩いた。ユウキはオロオロと私の後を付いて来る。
「本当だって。おまえは俺のこと兄弟くらいに思ってるんだろうけど。いやオレも、ガキのころはそうだったけどさ」
「なにそれ、信じられないっ」
「気が付いたら、好きだったって言うか。これからもずっと一緒にいたいなって。それって好きってことだろ」
そんな甘いこと言ったって、絶対、許さないんだからっ。
かぁーっと、怒りと共に、血が頭にのぼってきた。本当に昔からユウキは人を小馬鹿にするところがある、許せない。何様だっ。生意気だ。でも、同じくらい優しくて、頼りになって、気のおけない、いいやつなのも知っている。
私は、慌てて付いて来るユウキに振り返った。
「でも残りの宿題、手伝ってくれるなら、許してあげる」
ユウキは目を丸くして、私の顔をマジマジと覗き込んだ後、ホッとしたようにハハッと微笑んだ。
「いくらでも、お手伝いします!」
その後、本当に私とユウキの恋が始まって、夏が終わった後の季節も、楽しくて、ワクワクして、ドキドキしたかは、また別のお話。
おわり