半径3cm未満に(2)
「うん。大丈夫。大丈夫、大丈夫…。
 日向は1人じゃない。」

俺は、何回彼女に"大丈夫”と言ったのだろうか。

本当に彼女は大丈夫になったのだろうか。

「…私の…おかあさ…警察に連れてかれて…。
 おと…さ…もいなく…な…て…。
茉衣ちゃ…怒…ってて…。
 歌衣く…も…私のこと…たぶ…きらっ…てて…。」

途切れ途切れに、消え入りそうな小さな声がした。

「私の…家族が…かぞくが…。」

ぎゅっと抱きしめる日向の力が強くなった。

「家族が…。消えちゃうよ…。」

家族が、消える。

日向が笑わない理由が、少しわかった気がした。

あいつは、家族が好きなんだ。
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