半径3cm未満に(2)
5、過呼吸の私と先生の過去。
目の前に、お母さんがいた。
「恋衣…戻っておいで…」
小さく、お母さんはそうつぶやくと、くるりと私に背中を向ける。
「お母さん…?お母さん…お母さん…!」
私は思わずお母さんの手をつかもうとして誰かに手首をつかまれた。
「恋衣、お父さんと一緒に行こう」
「おと…さん…?」
私の手首をつかんだのは、まちがいなくお父さんだった。
「おとおさんっ…!?
ねえ、どこ行ってたの!?
急にいなくなって、ずっとさがしてたんだよっ…!?」
私はお父さんの胸にとびこんだ。
「ごめんね、恋衣…。
でも今日からずっと一緒にいようね。」