半径3cm未満に(2)
ああ、私、幸せ者だなあ。


そんな思いと同時に、夢のことを思い出した。

幸せだった、あの時を、思い出した。

あのお母さんは、昔の優しいお母さんだった。

お父さんがいなくなる前の、子ども思いな、お母さんだった。

…ずっと、このまま続くと思っていたのに。

ーー「もう二度と来んな!!!タヒねっ!!!」

ーー「お前のこと…もう家族とは思ってない」

いつの間にお母さんは変わってしまったのだろう。

どうして私は、こんなに過去を背負わないといけないのだろう。

思い出したくもないのにっ…。

「はあっ…はあっ…」

胸がきゅうっと苦しくなって、また呼吸がまともにできなくなった。

せっかく先生が治してくれたのに。

全てが無駄だったのかのように、同じことが起きた。
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