半径3cm未満に(2)
そう言った先生は手を離し、車の鍵を開ける。

「…何でも話聞くんですね?」

「うん。俺の家行くけどいいね?」

私はうなずいて、車の後ろに乗った。

「…日向。魚島先生と何があったの?」

車を走らせた先生の言葉に、私は一瞬言葉をつまらせてしまった。

「…。私の先生です」

「じゃあ、彼氏じゃないんだ?」

「かっ…かれっし…!?」

"彼氏"という単語に思わず反応してしまう。

「ほんと、そうゆーとこ全然変わってないね。
でもそーゆーとこも好きだけど」

「すっ…すきっ…!?」

あーもう。

こんなに反応してしまったら、先生の思うツボに決まってる。

「あははっ、やっぱ面白いわ、日向。」

「からかわないでください…。」

少し頬をふくらませて、鏡ごしの先生の目を見た。

横に少し細長い、二重の目。

その下にある、小さなほくろ。

思わずみとれてしまって、あわてて視線をずらした。
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