元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

レインは奴隷だからだ。お嬢様はレインを沼に突き飛ばし、レインの髪が泥で汚れるのを見て喜び、うふふ!と声をあげた。

「名無し!ちゃんと探しなさいよ!見つけないと、食事抜きだからね!」
「……はい、お嬢様」

静かにそう口にしたレインに、お嬢様は何が気に入らなかったのだろう。手にしたかさの先でレインをつついた。つつかれて転んだレインは、泥の中に頭から突っ込んだ。
お嬢様はそれに満足したようににんまり笑ったが、それでかさの先が汚れたのが気に食わなかったらしい。

「あんたのせいでかさが汚れたわ!許さない!名無しのくせに!」

その場に落ちていた石を投げつけられ、それは力なく泥に沈むレインの顔に当たる。
痛い。血が出たかもしれない。伝う濡れた感触が、泥のものと違うこと、それから、鉄錆に似た臭いが鼻をついたから、そう思った。

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