元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
「うん、よく似合っている」
「似合う……?」
ユリウスの手が離れていく。それを名残惜しく思いながら、レインはふと窓に視線をやった。
そっと片耳にかかった髪を持ち上げる。――はたして、そこにはきらきらと輝く青い――深い青、群青色をした宝石のついたイヤリングが飾られていた。
たった数年公爵令嬢をしただけのレインでもわかる。これは貴族でもなかなか手に入らないほど、極上の質をしたサファイアだ。大きさは小指の爪ほどもあり、そしてそれはこんなふうに簡単にぽんとつけてよこせるものでありはしなかった。
「お兄様、これは……」
「レインには青が似合うと思って。注文しておいたんだ。卒業式前に完成してよかった」
レインは息を呑んだ。心臓が激しく鼓動して、もうどうしようもないくらいに、今すぐ叫びだしたいような気持になる。サファイアはユリウスの髪の色をしている。
ユリウスは兄妹の情で贈ってくれているのだとわかっているのに、下手にサファイアがユリウスの色彩を持っているせいで、勘違いしそうになってしまう。