元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
今にも爆発してしまいそうな心臓を無理矢理に押さえつけて、レインはなるべくしとやかに見えるように微笑んだ。そっと耳たぶに触れて、ユリウスの目を見つめる。眼鏡越しでもわかる、美しい、ユリウスの琥珀のような目がレインを映している。
レインははにかんで言った。
「嬉しいです、お兄様……大切に、大切にします」
「卒業式、それをつけてくれるかい?」
「もちろんです。作っていただいたドレスに、きっとよく合います」
「ドレスに、じゃなくて、君に、似合うんだよ、レイン」
「まあ、お兄様ったら」
レインは口に手を当ててクスクスと笑う。ユリウスの琥珀色の目も細まって弧を描いている。
それにまた照れてしまって、ごまかすように口に含んだ紅茶はあたたかい。
レインは、何度も何度もユリウスに幸せをもらっている。こんなふうに幸せだから、レインはきっと、もう何が起きても大丈夫だと思った。