元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

「レイン様、私、レイン様にお話があるんです。来ていただけますか?」
「……ここで、話すのではいけないのですか?」
「ここではちょっと……すみません」

 全然申し訳なくなさそうに、ヘンリエッタが言った。
 オリバー王子たちはここにはいない。周囲を見回して、それならいいわ、と思って、レインは頷いた。

「わかりました。……けれどどこへ?」
「こっちです」

 ヘンリエッタはニコ、と笑ってレインを先導した。
 カフェテリアから続く長い渡り廊下を渡り、ヘンリエッタとレインは突き当たりの階段を上っていく。
 人気のないところに案内されるかと思えば、そこそこに人目がある。それに安堵していると、ふいに、階段の踊り場で、ヘンリエッタは立ち止まった。

「ねえ、レイン様」
「どうしました? コックスさ……」

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