元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
「おひいさまを幸せにするんだろう? 危機を排除するんだろう? いわばそれは姫君の騎士となるということ。想う相手とてそれは同じだ」
「……騎士」
「そうだ、騎士だ。ユリウス・アンダーサン。俺は爵位なんぞ何も持たぬ、ただの平民。だがかつて前女王陛下に仕えた騎士、ダンゼントが息子、ベンジャミンは、この誇りだけは違えたことがない」
べンジャミンは言って、乗りあがるようにしてユリウスに顔を近づけた。苛烈な感情を帯びた瞳が炯々とぎらついてこちらを見ている。
「婚約破棄が難しい? たわごとを抜かすな、ユリウス・アンダーサン。お前がやろうと思えば可能なはずだ。おひいさまの評判? お前が守るんだろう。悪意からも、何からも。お前が悩んでいるのは、おひいさまの想いを聞かずに破棄をしたことで、お前がおひいさまを傷つけるかもしれないということを恐れているからだ」