元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
ユリウスが傍らのベンジャミンに声をかけると、ベンジャミンはすいと会場を見渡した。まもなく、一人の女に目をつけ、コックス子爵夫人だな、と部下に確認をとった、部下が頷くと、コックス夫人を捕らえ、連行するようにして帰ってくる。突然のことにぎゃいぎゃいと騒ぎたてる女は身なりこそ綺麗なドレスを着ているが、レインが目を通した招待客リストの中にいない人物だった。おそらく話に出て来たコックス子爵夫人なのだろうが、その眉は恐ろしいほど吊り上がり、まるで悪魔のようだった。
「離しなさいよ!」
「お義母さま!」
ヘンリエッタが叫ぶ。ベンジャミンは「招待状もないのにどうやって潜り込んだんだ」と冷たい言葉でそれに返した。ユリウスがすぐに、何か書類のようなものを取り出し、話し始めた。
「コックス子爵夫人は社交界で自分はまもなく王妃の母となるのだと吹聴していた。それで調査をすると、とんでもないことがわかった」