元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

 レインはまず、前髪を横に流した。そして、かけていた眼鏡をそっと外す。前を向く。
 周囲から、ほう、とため息が漏れた。

 ――えっ、レイン様、あんな顔をしていたの。
 ――あんな美少女なんて聞いてない!
 ――そう言えば、レイン様はいつから顔を隠してた?
 ――知らないよ。だってレイン様を美人だとか悪くないって言ってたやつらは、みんな殿下ににらまれて退学していったじゃないか。

 ざわめきが広がる中、オリバーが周囲を睨んで黙らせようとする。けれど一度始まったざわめき話は止まらない。

 ――オリバー様が扇動してたんだよ、きっと。
 ――自分の浮気をごまかそうとして?うわ、ひっでえ!
 ――じゃあ、レイン様がヘンリエッタさんを階段から落としたのも……。
 ――オリバー様がヘンリエッタさんに命じた自作自演……ってこと!?

 オリバーへの不信の声が高まる中、オリバーが歯ぎしりをしながら、ヘンリエッタを突飛ばすようにして手放し、ユリウスに詰め寄った。

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