元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
「コックス子爵夫人と令嬢は詳しい取り調べに連れて行け。オリバーは部屋に」
「はい、お任せください」

 ベンジャミンが頷き、ユリウスはオリバーの背後で呆然と座り込むコックス子爵夫人とヘンリエッタを見やった。レインもその視線を追う。ヘンリエッタは何が起きたのかわからない、という表情でぼんやりしているが、コックス子爵夫人は頭を掻きむしりながら「どうして、どうして」とつぶやいている。

「レイン、帰ろう」
「……はい、お兄様」

 それに背を向けるように、ユリウスがレインの背を優しくなでたから、レインは頷いて踵を返した。気づけば、空は群青に染まりきっていた。


< 133 / 243 >

この作品をシェア

pagetop