元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
第九話 あなたこそ私の陽光
星が瞬き、満天の空を流れている。
ほとんど振動のない、快適な帰りの馬車で、レインは優しく自分の頭を撫で続けているユリウスを振り仰いだ。
「私は、本当に王女なのですか」
レインの言葉に、ユリウスが頷く。その白いおもては静かだった。まるで、感情を押し込めているみたいに。
「ああ、そうだ。レイン。お前はこの国の、先代女王の遺児。この国の、正統な後継者だ」
「そうです、か……」
予想はしていたことだった。あの卒業パーティーの騒動で、何度も繰り返されていたことだ。自分が王女なのだと察しない方が難しかった。
「私の名前……本当の名前は、イリスレイン、というのですね」
「そうだ」
「先代女王陛下と王配殿下については、学んだので存じております。病を得られて崩御した先代女王陛下と、同時期に落馬事故で亡くなられた王配殿下……」
「……」
「でも、本当はきっと、違うのでしょう……? 私は誘拐されたと聞きました。それと、先代女王陛下と王配殿下の死が別の出来事だとは思えません」