元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

「……きっと、お兄様はそれで、ずっと私への罪悪感がおありだったんですね。それで私を守ろうと……」
「違う。それは、違う」

 ユリウスが顔をあげた。
「私が君を守りたいのは、君を愛しているからだ、レイン。罪悪感からなどではない」

 ユリウスの目がレインを映す。琥珀色の目が今は赤くて、ああ、なんて優しいひとなんだろうか、と思った。自罰的で、責任感が強くて。だからレインを守ることに必死なのだろう、と。

 レインはユリウスの背に手を回した。

「お兄様はずっと気にされておいでかもしれません。きっと、お兄様は自分を許せないとお思いなのでしょう……」
「……」
「――それなら」

 レインはユリウスの背をそっと撫でた。優しいこの人が、自分を許せるようにと願って。

「私がお兄様を許します。お兄様は私を救おうとなさった。私が奴隷になっても、生きているのかもわからないのに探してくださった。あの暗い世界から、掬い上げて、守ってくださった」

 レインはそこで一度、言葉を切った。何を言えば伝わるのだろう、どうすれば、この胸の想いを言葉にできるのだろう。
 そう思った。

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