元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
レインは息を吸った。ユリウスの琥珀色の目にレインが映っている。それが何よりうれしかった。
「――愛しています。お兄様、いいえ、ユリウス様。家族として、妹として、ではなく、あなたを――あなたを、私のたった一人として、お慕いしております……」
妹が兄を、ではない。ずっと、ずっと、おかしな妹だと見捨てられるのが怖くて言えなかったこと。
この人を、ユリウスを、誰より、何よりも、愛しているということ。
――あなたこそ、私の陽光だということ。
そのすべてを込めて、レインはユリウスに抱き着いた。
「――……!」
ユリウスは手を震わせた。けれど、次の瞬間、痛いくらいに強い力でレインを抱き返した。
息ができない。それほど強い力で抱きしめられて、レインは肺の中の空気をすべて吐き出してしまった。みしみしと骨が鳴る。けれど、今はこれが嬉しくてならない。