元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
第十話 前に進むために
「お兄様……あ」
「ユリウス、だろう、レイン」
「はい、ユリウス様……」
冬が終わりを迎え、暖かくなってきた春の初め、タンポポの花が咲き乱れる庭園に設えられた東屋で、レインはユリウスとお茶をしていた。
お茶はダージリン春摘みの新茶をいち早くに取り寄せたものは香り高く、味も爽やかだ。
厨房のコックが腕を振るってくれた持ち運びもしやすいクッキーはスパイスがきいていておいしい。苺のペストリーも苺が甘く、うっかり食べ過ぎそうになるくらいだった。
けれどいっとうレインが気に入っているのは、黄色いタンポポと琥珀色のダリアが一面に、絨毯のように咲くこの庭だ。庭師のダンの腕がいいのか、下品でなく植わったタンポポと、ところどころに咲いた大きなダリアがよく映えている。
レインは、未だにユリウスのことを「お兄様」と呼んでしまうことをユリウスに甘くとがめられながらはにかんだ。
「レイン、どうしてそんなに遠くにいるんだい? こっちへおいで」
恥ずかしがってベンチの向こう。ひと二人分ほどの間を開けて座っていたレインをユリウスは手招いた。
「は、はい、お兄……ユリウス様」
「ユリウス、だろう、レイン」
「はい、ユリウス様……」
冬が終わりを迎え、暖かくなってきた春の初め、タンポポの花が咲き乱れる庭園に設えられた東屋で、レインはユリウスとお茶をしていた。
お茶はダージリン春摘みの新茶をいち早くに取り寄せたものは香り高く、味も爽やかだ。
厨房のコックが腕を振るってくれた持ち運びもしやすいクッキーはスパイスがきいていておいしい。苺のペストリーも苺が甘く、うっかり食べ過ぎそうになるくらいだった。
けれどいっとうレインが気に入っているのは、黄色いタンポポと琥珀色のダリアが一面に、絨毯のように咲くこの庭だ。庭師のダンの腕がいいのか、下品でなく植わったタンポポと、ところどころに咲いた大きなダリアがよく映えている。
レインは、未だにユリウスのことを「お兄様」と呼んでしまうことをユリウスに甘くとがめられながらはにかんだ。
「レイン、どうしてそんなに遠くにいるんだい? こっちへおいで」
恥ずかしがってベンチの向こう。ひと二人分ほどの間を開けて座っていたレインをユリウスは手招いた。
「は、はい、お兄……ユリウス様」