元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
レインはかすれた声で己の主人――領主を呼んだ。
レインに呼ばれた領主はレインの声にわざとらしく嫌な顔をして、まるでレインに話しかけることが唾棄すべきことであるというように足で蹴った。
「きゃ……!」
「この死にぞこないが。パトリシアの命令をこなさなかったらしいな!」
パトリシアというのは領主の娘のことだ。パトリシアの人形を見つけられなかったことをなじられているらしい。
レインは目を伏せ、領主の足蹴を耐えるようにおとなしく受けいれた。
がん、がん、と何度も蹴られる。ただでさえ弱った体が傷だらけになっていく。
ひとしきりレインを痛めつけてすっきりしたのか、領主はふうと一息ついて、レインを睥睨した。
「名無し、命令を聞かなかった罰だ。今日はそこから出ることを禁じる」
「はい……」