元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
第十一話 ヘンリエッタという「ヒロイン」(ヘンリエッタ視点)
故郷に雨が降ることはめったになかった。ヘンリエッタの故郷は、南にある、枯れた土地だった。ヘンリエッタが生まれたとき、ヘンリエッタの家にはお金がなくて、いつもヘンリエッタはおなかをすかせていた。ヘンリエッタの産みの母はいつも、悲しい顔で「ごめんね、ヘンリエッタ」とヘンリエッタに謝っていた記憶がある。
ヘンリエッタが物心ついて間もなく、ヘンリエッタは子爵家に引き取られた。
袋一杯の金貨を持って帰っていく母の後姿を、ヘンリエッタは見えなくなるまで見ていた。
コックス子爵夫人だという新しいヘンリエッタの母は優しかった。
新しい母は、ハシバミ色の髪を揺らして、ヘンリエッタを大切な宝物を見るような、熱のこもった目で見つめてくれた。
新しい母は、実は自分は異世界からの転生者なのだと言った。
異世界には、ヘンリエッタが見たこともないような、想像したこともないような高度な文明があって、母はそこで死んで、この世界に生まれ変わったのだと。
ヘンリエッタが物心ついて間もなく、ヘンリエッタは子爵家に引き取られた。
袋一杯の金貨を持って帰っていく母の後姿を、ヘンリエッタは見えなくなるまで見ていた。
コックス子爵夫人だという新しいヘンリエッタの母は優しかった。
新しい母は、ハシバミ色の髪を揺らして、ヘンリエッタを大切な宝物を見るような、熱のこもった目で見つめてくれた。
新しい母は、実は自分は異世界からの転生者なのだと言った。
異世界には、ヘンリエッタが見たこともないような、想像したこともないような高度な文明があって、母はそこで死んで、この世界に生まれ変わったのだと。