元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
第十二話 立太子に向けて
「イリスレインを立太子するにあたって、まずは性をグレイウォードに戻すかい? もともと、君の母君もグレイウォードだったんだよ」
翌日の朝餐の場で、国王がほのほのとそう言った。
ラズベリーやブルーべりーの入ったヨーグルトを食べていた手を止めたレインは、しばしの間、なんと返すべきかわからなくて口ごもってしまった。
「……私は、アンダーサンのままでいたいです。育ったのは、アンダーサン公爵家ですから」
ようやっと絞り出すように口にした言葉に、国王はそうか、そうか、と笑う。昨日王城に泊まっていたユリウスが心配そうな目を向けてくるのにほほえんで、レインはヨーグルトに混ぜられたブルーベリーをスプーンですくって食べた。
正直、よくわからない。産みの母、本当の父と同じ姓になるということと、母のあとを継いで女王になるということに不安を覚えるのは、昨日見た夢のせいだろうか。
「レイン」
「あ……」