元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
呼ばれて顔をあげる。
気付けば朝餐は終わっていて、ぼうっとしているレインを、ユリウスが気遣うように見ていた。
「ユリウス様……」
「急ぎの用があるとかで、陛下は行ってしまわれたよ。……レイン、大丈夫かい?」
「大丈夫、なんでしょうか。私、今も迷っていて……」
伏せた目の先に、自分の震える指先がある。
ユリウスがそっとその上に手を重ねて、優しく言った。
「女王になるのが、怖い?」
「わかりません。私が女王になるべきなのか、女王となって、たくさんの人の生活を背負う覚悟があるのか、わからない……」
レインの言葉に、ユリウスは「そうか」と静かに言った。
否定も肯定もされなかった。