元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
立派な墓は、しかしそのタンポポによって慕わしく、ぬくもりのあるものに感じられる。
ユリウスに導かれてそこにたどり着いたレインは、タンポポで挟むように形作られた小道を通り、墓石の前に立って、静かに白い墓石を眺めた。
寄り添うように、女王の墓石と王配の墓石がある。一陣の風がタンポポの匂いを連れてきて、いつの間にか、レインの頬には一筋の涙が光っていた。
「あら……なぜ……涙が……」
レインは呆然とその場に立ちすくんだ。昨日見た夢が思い起こされる。
「レイン……?」
「夢を……見たんです。誰かに愛されている夢を……でも、その夢はつらい出来事で終わってしまって」
ユリウスにそっと抱き寄せられる。ユリウスの肩口に額を押し当てるようにして涙を流すと、夢の内容がはっきりと思いだされてきた。