元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
けれど、そんなレインの様子を気にもせず、ヘンリエッタは「決まってるじゃない、この世界の話よ」と、あたかもそれが常識的なことであるかのように目を瞬いた。
「この世界……?」
「そう、お義母様が教えてくれたわ。この世界は、異世界人が作ったゲームの世界なの」
「『ゲーム』……?」
「その異世界にはなんでもあって、人は娯楽としていろんなものを作ったわ。そのうちのひとつがこの世界。恋愛シュミレーション、乙女ゲーム『私の陽光』……。私はその世界の主人公で『ヒロイン』。攻略対象に特定の行動をして進んでいけば、相手は『ヘンリエッタ』を好きになるの」
ここはそういう世界なのよ、とヘンリエッタは自慢げに言う。
「あなたのお義理母様は異世界人なの……?」
「違うわ。『転生者』よ」
とっさに話を合わせたレインに、ヘンリエッタは嬉しそうだ。
彼女の目には、おびえてぐずぐずと泣くアレンが見えないらしい。
「お義母様は私のためになんでもしてくれた。悪役令嬢……悪役王女?イリスレインを攫って、奴隷に堕とす手引きだってしてくれたの。全部全部、『ヘンリエッタ』のために」