元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
 ヘンリエッタを伴い、レインは部屋を出る。廊下に出て、走り出した後ろから「イリスレイン、貴様……!」という、怒り狂った声が聞こえてくる。

「ヘンリエッタ、出口は?」
「大階段を降りたところ……でも、だめ、見張りがたくさんいるはず……」

 背後から大きなものが転がるような音が響く。まだまっすぐに走れないだろうオリバーだが、追い付かれるのは時間の問題だ。

「では、立てこもれる場所は?」
「ええっと……」
「おねえたま、あっち! 誰もいないよ!」
「――! 主寝室! 中から鍵がかけられる!」

 ヘンリエッタが叫ぶ。レインは頷いて、ヘンリエッタの手を引いて駆け出した。
 カーテンの隙間から朝焼けの光が差し込んでいる。夜明けが、すぐそこまで来ていた。

 走る、走る、走る――。二階の廊下を掛け抜け、端の部屋にたどり着く。
 鍵はかかっていなかった。勢いよく開けた扉に滑り込むように三人入り、中から鍵をかける。

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