元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

 最悪、ヘンリエッタとアレンだけでも……。
 レインがそう考えて、腕の中の二人を見下ろした、その時だった。

「――レイン!」

 最初、幻聴かと思った。レインを案じる、硬い声。低いその声は、レインが大好きなもので。

「――レイン、どこにいる!?」
「この声……ユリウス様……?」

 ヘンリエッタが驚いたように目を瞬く。

「ゆりうすおにいたまだ!」

 アレンが喜色にあふれた声をあげた。
 声は窓の向こうから聞こえている。
 レインはカーテンをもどかしく開け、バルコニーへと続くガラス戸をを開いて外へと身を乗り出した。

 ――はたして、そこにユリウスはいた。たくさんの兵士を率いて。あの、サファイアに気付いてくれたのだろうか。

 ああ――ああ――!
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