元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

 いつだって、ユリウスはレインの救いだ。背後からオリバーの怒鳴り声がする。少し、焦った色が混ざっていた。

「畜生! アンダーサン公爵がなんでここに! なんでばれたんだ……! こうなったら、お前たちを人質に……」

 がちゃがちゃと鍵穴に鍵を差し込まれる音がする。
 開いた扉から家具が雪崩れるようにあふれ、オリバーを足止めする。

「うわあ!? なんだこれは!」

 その隙に、レインはバルコニーの手すりに乗り上げるようにして叫んだ。

「ユリウス――!!」
「……ッレイン!」

 レインに気付いたユリウスがレインを呼ぶ。
 ユリウスのそばにいるダンゼントがすばやく硬い鎧を脱ぎすてる。
 ユリウスにさし出された手、跳べ、と言っているのだ。

「大丈夫、レイン、必ず受け止める」

 その言葉を疑うことなどありはしない。背後から家具をかき分けてオリバーが迫ってくる。
 不安そうなアレンを、ヘンリエッタが抱き上げた。

「大丈夫、アレン様……一緒に跳べば、怖くないわ」
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