元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
 目まぐるしい人生だった。
 命の危険だってあった。

 遠くでダンゼントやベンジャミンがおいおいと泣いている。
 ベルやチコ、アンダーサン家の使用人たちだって、涙ぐんでいる。

 そうやって愛を受け取って、生きてこられたのは、あなたがいたからだ。

 私の陽光――私のあなた。
 雨は、陽光があるから虹を空に描ける。

「レイン、愛している。君を、この先一生、何があっても」
「私も……」

 レインは、あふれるような思いを込めて、囁くようにつぶやいた。胸がいっぱいで、それだけしか出なかった。

「私も、ユリウス様を、愛しています」

 ――抱きしめられ、口付けられた。触れた場所から想いがこみ上げてくる。

 貴方が好きだと、愛していると。
 こんなに幸せな日はない。

 ――雨の日に見つけたから、君はレインというんだよ――……。

 私の、私だけのあなた。レインにとっての陽光がユリウスだというのなら、きっとユリウスにとってもレインは雨なのだろう。
 だから――だから、レインはずっと前を向ける。ユリウスを、愛しているから。
 空はどこまでも青く、高く。雲一つない晴天だ。

 それは、二人のこの先の未来を表しているかのようだった。

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