元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

「ど、奴隷にしつけをしているだけです!わ、私はこいつの主人ですから」
「ほう……お前はこの子を奴隷として所持している、というんだな」
「そうです!」

 ユリウスの青い目が炯々と輝く。眼鏡越しのその目は、獲物を捕らえるオオカミのようだ。

「奴隷がこの国で禁じられているのは、子供でも知っていることだが……知っていて、罪もない子供を奴隷として虐待していたならば、その罪はけして軽くはないぞ、タンベット男爵」
「あ?ああ……!」

 しまった、というようにご主人様――タンベット男爵が口を押さえるが、ユリウスは厳しい目を逸らさない。そうこうしているうちに、雨の庭にもうひとり、ユリウスとよく似た、上背のある青年が歩いてやってきた。向こうには、男爵夫人の姿が見える。

「アンダーサン公爵閣下!雨の中外に出られるなんて……」
「しかし、タンベット男爵夫人、我が息子、ユリウスがこちらにいるというではないですか。親として子を心配するのは当然です」
「心配、ええ、心配!そうでしょうとも!意地汚い奴隷にたぶらかされたご子息を心配するのは当然のことですわ!」

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